2007年10月15日

【女将の一言】『しらびそ高原』珍道中《 其の二》

P252i0012976491.jpgななかまどの真っ赤な実は、紅葉にはまだもう一歩の辺りの緑のなかで一際、秋を主張していました。
「さあ、早く帰ろう。暗くなるから。」と言いつつ、頂上を出発。下栗の里を目指して山を下ろうとして、看板が目に入った。『先日の大雨で崖崩れが発生した為通行止め』「あら〜〜〜っ!」「これじゃあ、里でガソリンが入れられないじゃあないの。ブツブツ…」「まあいいっか。なんとかなるでしょう。」自問自答しながら車をころがす。山道の下りを全面的にエンジンブレーキのみで下る。「ねー、いい眺めー。」まだ余裕がある。くねくねとした道を快調に下りて行く。夕闇はもうそこまで迫っていた。ライトを点けて薄闇の中を下る。「あっ!何かが動いた!何あれ?」眼の前3メートルくらいを左から右へ『のったり、のったり』ねずみ色の生物が動いていく。ねずみのように見えるけれど、ねずみだったらこんなにのろい訳が無い。思わずブレーキをかけながらハンドルを切る。「何も感触が無い。」「でも心配。」急いで路肩に車を止め、降りて上方を見る。薄闇の中では道路の窪みさえも生物に見えてしまう。7メートル位坂を上がったところに、“それ”はいた。大きな、人間の片手を広げたくらいのカエルだった。「こんな大きな蛙、見たことが無い!」暗闇の中ではっきりとした色は分からなかったが、肌色にこげ茶色の斑点のある蛙だった。外傷は見当たらない。けれども、動かない。前輪は確実に避けた。とすると、後輪でひっかけてしまったのか???「止まればよかった。(- -;)」口から舌が少し出ている。「やっちゃったぁー。ごめんね。ごめんね。」心の中で何度も謝った。と、何としたことか、娘の手が「すーっ」と眼の前に伸びた。そっとその蛙をすくって手に乗せた。
「えーっ!触れるのー? だって、外国なんかには皮膚に猛毒のある蛙がいるじゃあない。触って大丈夫なの?」娘は無言でひっくり返して見ている。「動かない。死んでる。」ポツリと言った。その蛙が向かっていた先には沢があるようだった。暗闇の中でさらさらと水音が聞こえていた。「早く沢へ返してあげて。」(既に手遅れだけど…)心の中で詫びながら、藪の中へポンと返し、気を取り直して車に乗った。

暫くは無言で後悔の念を噛み締める。もう、とっぷり日は暮れている。「時間は?」と見るともう直ぐ6時。もうすっかり夜だ。やっと、民家の明かりが見えてきた。「商店で近くにガソリンスタンドがあるか聞いて見る?」と聞くともなく呟く。「そうねぇ。」そう言っているうちに『矢筈トンネル』入り口の看板が見えてきた。「まあ、行ける所まで行くか?」どうせ無駄と知りつつ、“航続可能距離”のボタンを押して見る。『航続可能距離 0km』と出た。分かっちゃあいるけど、「ええーっ!?」「でも、だって動いてるよー。」「でもね、以前ガソリン0になってから20kmくらい走れたから・・・。」と、依然強気。「トンネルの中で止まっちゃったらどうする?」娘が不安そうに聞く。「だったら、そこから歩くだけ。いいじゃあないの、冒険冒険!楽しいじゃない?」「そんなのやだー。」無意味な会話。そうこうしている内にトンネルも抜け、下りに・・・。
喬木村のバス停に乗り合いバスの車庫発見。バスの乗務員さんがバスを車庫に納めている。そこで、最悪の事態に備え、駄目元で聞いて見た。「すみません。この辺りにガソリンスタンドってありますか?」すると、「飯田まで行かないと無いねー。」とつれない返事。「じゃあ」と言って、『JAFの番号を教えてあげる。』と親切にも沢山のカードの中から時間をかけてその番号を探し出して教えてくださった。何とありがたいことでしょう。「でも、会員じゃあないけどな・・・。(^ ^;)」お礼を言って車に乗り込み、そこで早速携帯をかけてみた。「あらーっ、圏外!」そうでしょうとも。山の中で、それも谷だし・・・。「民家で電話を借りるっていう手もあるしね。」と、強気復活。“大丈夫”という根拠の無い自信。
「さあ、進もう。」と思ったとたん、今度は上り坂ばかり。「うーん、大丈夫か?」内心ちょっと不安。娘はアクセルの音に合わせて、『うーん!』と、力を入れて車に協力している積り・・・。行けども、行けども上り坂。「頑張れ!車!」と、何故か車の応援になる。車は念力で動くのか?「そう。動く。」と心の声。「よっしゃあ、頑張れ。」と念ずる。すると、突然視界が開けた。峠の頂上に着いた。娘は兄に携帯で状況報告。その返事たるや『バーカバーカ、山だから転がしてくれば大丈夫・・・。』何とも心強い励まし。ありがとう。(- -#)
「もう今度は、ガソリン使わないから大丈夫。」と、快調に下り坂を転がして下りる。すると突然、視界が開け、左手に“飯田の街の明かり”が。「見えたーっ!!!」娘が感嘆の声をあげた。明かりがキラキラ輝いている。飯田の夜景も捨てたもんではない。「なんか、嬉しくて涙が出てきたョ。ウルウル・・」よっぽど不安だったらしい。「よかったねぇ。もう安心だ。」強気な自分も内心ホッとしている。直ぐに弁天橋。橋の袂の出光石油発見。「どうする?市内のいつもの所にする?」「やだ、絶対ここで入れる。」娘の声に力が入る。「はいはい。」「満タンでお願いします。」「しっかりと入りましたよー。63ℓです。」横でスタンドのお兄さんがニコニコして言った。「そうですよ、ほぼ空でしたから。ハハハ…」
ガソリン補給後は、安堵感も車の重みもずっしりと増し、後は我が家の灯り目指して進むだけ…。時間は6時45分。約3時間のハラハラ、ドキドキの弥次喜多道中ももう終わり。「面白かったねー。」と私。「こんなのもう嫌だ。ばあやに嵌められた。」ばあやとは私のこと。家では何故か“ばあや”と呼ばれている私でした。

お終い

女将: 児島敏子

posted by 三宜亭本館 at 08:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 周辺観光情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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